2002年05月08日

【007】落語と父の思い出(花嶋いとみ)

image7.gif 幼い頃、絵本や童話の読み聞かせで眠ったという記憶をお持ちの方は多いと思うが、私のそれは少し違っている。
私の幼い頃、母が病気で入院中という事もあって、父が代わりに私を寝かせ就けてくれた。そんな時の父は決まって落語を話して聞かせる。落語は「饅頭こわい」「時そば」「子ほめ」「転失気」「勘定板」・・・などなど。

子供にも解る滑稽物が多かったが、そんな話を聞いている私といえば寝就くどころか面白くて目は爛々と輝き、最後の落(オチ)を聞くまでは絶対に眠らないのである。父の方も私が夢中で聞いている顔を見れば、尚更気を良くし、もう一番、と一晩に二席ほど話してくれる事も度々である。今にして思えば、そんな時の父はきっと志ん生や文楽を気取っていたのだろう。

こんな環境もあってか、私は子供ながらに古い物が好きで昔の言葉やら言い回し、時代劇のセリフやらが同年代の子供に比べれば多少理解出来ていた様に思う。私は落語に登場する人物達が好きだ。思えば父も落語の主人公を地で行く様な生き方をして来た様に感じる。

現在、私の主人も落語好きがこうじて、またそんな折、幼馴みの同級生との出会いもあり、二人とも意気投合し、大いに盛り上がり、そして更に周りの方の暖かいご支援もあって"丸花亭"(大和田落語会)という現在の席を立ち上げる事が出来た。そして私もまた大好きな落語を聞けるに至ったのである。これも何かの縁なのだろうか?

私の父は八年前に他界してもういないのだが、父が生きていて、こんな落語会を見る事が出来たなら、きっと大喜びしたに違いない。落語会の半纏を着て張り切って下足番を買って出ていただろう。落語を聞けば自然に父を思い出す。落語の主人公に父がダブル。

天国の父は私達の落語会を応援してくれているかな?きっと、そうだ!! そう思う。
父が話してくれた落語は今度は本物の噺家さん達により、主人や私やこの落語会に足を運んでくださるお客様達に今日も笑いを提供してくれている。

平成14年5月8日
posted by ひろば at 14:32| Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ
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