2004年02月01日

【035】狸や狐も友達(鈴木和雄)

落語は物語の世界の産物である。人間と人間との関係を真贋取り混ぜて面白、可笑しく、時には悲しく述べている物語である。しかし、人と人ばかりでなく、人と動物との関係についても語ることの出来るのが落語である。勿論歌舞伎の世界でも一般の芝居の話の中でも動物は出てくるが数は少ない。日本の昔話や童話の中にも動物が出てきて人間と係わり合う「金太郎」や「桃太郎」「因幡の白兎」、グリム童話の「狼と赤頭巾ちゃん」等々、幼い頃からこれらの話を大人から聞かせて貰い、子供たちは想像を働かせて、彼らなりの世界を頭に浮かべて楽しんでいるのである。
こうやって見ると落語は大人の童話なのかも知れない。

噺に割合多く出てくる狐を通して人間は狐のずる賢さでなく、逆に人間そのものの狡猾さを表したり、「七度狐」のように何度も騙される二人の旅人の姿はまさしく現代の「カモ名簿」で何回も悪質なセールスマンに引っ掛かる人のことを語っているのかもしれない
。狸にしても私達は「狸に騙される」という観念で「狸親父」なる言葉に親しんでいるが、意外にも落語の狸は結構人間を助けてくれたり、楽しませてくれたり、役に立ってくれる動物だ。このように噺に登場する動物は色々あるが、どのくらい取り上げられているのだろうか。
「落語事典」東大落語会編には約1200種余りの噺が集約されているが、この内動物に係わっているものをあげて見ると次のようになる。

猫(16)、狐(14)、狸(11)、鼠(9)、犬(6)、牛(5)、馬(5)、猪(3)
魚介類(21)・・・内、一般的な魚(6)、鰻(7)、秋刀魚(3)、ふか(1)、鯉(1)、穴子(1)、鮑(1)、金魚(2)、鯛(1)、蟹(1)、蛸(1)、
鳥類(21)・・・内、鶴(2)、鳥(1)、雁(1)、雀(1)、鳶(1)
虫類(9)・・・内、虱(2)、蚤(2)、蚊(2)、蜻(1)、いもり(1)、蟆(1)
その他 猿(1)、鹿(1)、熊(1)、象(1)、大蛇(2)

となっている。

これらは題名で分類しているが実際には動物の名前は付けられているが、噺の内容はそのものでないことがある。例えば、狐で「今戸の狐」は狐の瀬戸物の像の事だったり「狐付き」は狐が付いたような病気の男の話のことだったり、また、猫でも「猫久」などは猫のようにおとなしい男の話、「猿後家」は後家さんが猿のような顔をしているだけで、猿そのものはでていない。「らくだ」はらくだのように大きなやくざの男の話で本物は出てこないことはご承知の通り。「鼠」も甚五郎にまつわる噺であるが、彫り物の鼠であり、本物は出ないし、円生さんのよくやった「鼠穴」も穴に係わるもので鼠は出ない。「狐と馬」と言うバレ噺があるが、これも女郎と男のそのものの話だそうだ。

人と動物の交流を通して、噺の上だけであるが、狐や狸でも人に役に立つことを教えているのかも知れない。人間の生活に本当は無い話をのせることに何らかの光明を与えてくれ、喜びや悲しみ、果ては警戒すべき世の中の暗部を話を通して私たちに何らかの示唆を与えてくれるものなのだろう。

平成16年2月
posted by ひろば at 06:28| Comment(0) | TrackBack(0) | エッセイ
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